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2021年、日本国内では新たに11,967件の法人が設立されました。
1日あたり約32社も新たな会社が誕生している計算です。(※1)
会社節理するハードルも、以前と比べてだいぶ低くなりました。
かつては会社設立の条件として、1,000万円の資本金が必要でした。
しかし2006年の会社法改正に伴い、資本金1円から会社を設立出来るようになりました。
法定費用を含む金額約25万円が用意できれば、1人で会社を作る事ができます。
しかし、いくら会社設立のハードルが下がったとは言え、提出書類が多い上に提出先も多岐にわたります。
そこで提出先ごとにおまとめし、必要な書類をご紹介します。
(※1)PRIMES(帝国データバンク)2021年の新設法人数、前年同月比2.0%減の11,967件
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000250.000043465.html
法務局・法務省に提出する書類
定款
会社の憲法とも呼ぶべき、会社運営の基本ルールを定めた文書です。
会社法27条にて、必ず決める必要があると定められている「絶対的記載事項」は次の通りです。
・目的
・商号
・本店の所在地
・設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
・発起人の氏名又は名称及び住所
以上の5項目の記載が無いと定款として効力が無く、会社設立が出来ない場合があります。
作成した定款は、会社の本店所在地と同じ都道府県の公証役場で「定款の認証」を受ける必要があります。
認証が済んだ定款は法務局に提出します。
また、会社保管用にも1通必要なので、合計3通が必要となります。
印鑑届書と印鑑カード交付申請書
会社の実印(代表者印)を法務局へ登録するための書類です。
印鑑届出書を提出し、印鑑登録を行います。
印鑑届出書には、届け出る本人個人の実印と印鑑証明書も必要です。
登録後、印鑑証明書を発行してもらう事が出来ます。
尚、印鑑証明書の発行には「印鑑カード」が必要となります。
「印鑑カード交付申請書」を法務局に提出すると交付してもらえます。
登録した印鑑は実印となります。
登記申請書
会社を設立する事を法務局に伝えるための書類です。
会社の形態により記載事項は異なりますが、書式はあらかじめ定められています。
法務局のWEBサイトからフォーマットをダウンロード出来ます。
また登記の方法も、オンライン申請と書面申請の2つがあります。
▶ 商業・法人登記の申請書様式(法務局)※参考リンク
登録免許税納付用台紙
登録免許税とは、土地や建物の登記や、免許・認可等、技能証明について課せられる税金です。
納付用台紙は、登録免許税を納付する際に領収証書または収入印紙を貼付けるためのものです。
現金ではなく、収入印紙で納付しますが、特に決まったフォーマットはありません。
登録免除税は、資本金額の0.7%もしくは、150,000円のいずれか高い方となります。
登記用紙と同一の用紙
法務局の登記簿ファイルに収納される非常に重要な書類です。
定款などの既に決まっている内容を書き写すだけですので、内容自体は難しくありません。
しかし、一字でもミスがあると登記を受け付けてもらえないので、注意が必要です。
書面以外でも、電磁的記録媒体での提出も認められています。
▶ 商業・法人登記申請における登記すべき事項を記録した電磁的記録媒体の提出について (法務省)※参考リンク
~法人登記後~ 税務署に提出する書類
法人設立届出書(法人設立後2か月以内)
納税地の所轄税務署長に提出します。
会社設立後、法人税を納める為に必要な書類です。
株式会社に限らず、合同会社など、いかなる法人であっても必ず必要です。
定款(写し)と履歴事項全部証明書も添付した上で提出します。
税務署以外に、各都道府県事務所、市町村役場への提出も必要ですが、提出書類のフォーマットや提出期限は場所によって異なります。
▶ 法人設立届出書(国税庁)※参考リンク
給与支払事務所等の開設届出書(法人設立日から1か月以内)
従業員に給与を支払う際、源泉徴収を行い、給与から所得税を天引きする必要があります。
所得税を納付するには、税務署から納付用紙を交付してもらう必要があります。
その際に必要な書類となります。
代表取締役のみで従業員がいない場合でも、会社から代表取締役に給与を支払う形になりますので、提出は必要です。
▶ 給与支払事務所等の開設届出書(国税庁)※参考リンク
青色申告の承認申請書(会社設立後3か月以内または申告しようとする年の3月15日まで)
会社が得る収益に対してかかる各種税金を納付するため、税務署への税務申告が必要です。
「青色申告制度」「白色申告制度」の二種類の納税方法がありますが、青色申告制度は、自主的に所得を計算して納めることです。
白色申告に比べ、提出書類が多く、手続きに手間がかかります。その代わり、青色申告特別控除により、最大65万円の控除を受けられる等、様々な節税メリットがあります。
申請書類は国税等のWEBサイトからもダウンロード可能です。
▶ 青色申告書の承認の申請(国税庁)※参考リンク
年金事務所に提出する書類
健康保険・厚生年金保険新規適用届(会社設立から5日以内)
以下に当てはまる事業所は、厚生年金保険、健康保険の加入が法律で義務付けられています。
該当する事業所は新規適用届の提出が必要です。
・法人事業所で常時従業員を使用する場合(事業主のみの場合も含む)
・常時5人以上の従業員が働いている事務所、工場、商店等の個人事業所
※法人ではない場合、法定16業種に該当しない、または該当しても従業員数が5人未満の場合は加入義務はありません。
▶ 新規適用届(日本年金機構)※参考リンク
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届(被保険者資格を取得してから5日以内)
従業員を採用した場合、該当事実があった日から5日以内に事業所所在地を管轄する社会保険事務所に提出する必要があります。
手続き後、事業所には「資格取得確認および標準報酬月額決定通知書」「健康保険被保険者証(保険証)」が送付されます。
申請書は日本年金機構のWEBサイトからダウンロード可能です。
労働基準監督署
労働保険保険関係成立届(従業員を雇った日から10日以内)
労働保険とは雇用保険と労災保険の事です。
保険としては2つとも別の制度ですが、保険料の徴収に関しては、労働保険として取り扱いがされています。
従業員を一人でも雇った場合、手続きが必要となります。
正社員以外にも、パートやアルバイトを雇用しても対象となります。
▶ 労働保険の成立手続き(厚生労働省)※参考リンク
労働保険概算保険料申告書(従業員を雇った日から50日以内)
労働保険料は前払いする必要があります。その年度(毎年4月1日から翌年3月31日)を単位として計算されます。
労働保険は、年度ごとに概算で保険料を納付します。
その後年度末に賃金総額が確定したら、精算する方法をとっています。
前年度の精算と、確定保険料の申告と納付の手続きを行う必要があります。
就業規則(変更)届(速やかに届出※従業員が常時10人以上の場合)
アルバイトやパートも含む常時10人以上の従業員を雇用している事業場は、就業規則を定めなければなりません。
また労働者の代表を定め、署名捺印のある書面を添付し、それぞれの事業場を所轄する労働基準監督署に届ける必要があります。
ハローワーク
雇用保険適用事業所設置届(適用事務所になった場合、その日の翌日から10日以内)
雇用保険被保険者資格届(従業員を雇った日の翌日から10日以内)
次のいずれかの条件に該当する従業員を雇った場合、雇用保険の加入が必要です。
▽雇用保険の加入条件
(1) 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること。具体的には、次のいずれかに該当する場合をいいます。
・期間の定めがなく雇用される場合
・雇用期間が31日以上である場合
・雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合
・雇用契約に更新規定はないが同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合 ( 注 )
[(注)当初の雇入時には31日以上雇用されることが見込まれない場合であってもその後、31日以上雇用されることが見込まれることとなった場合には、その時点から雇用保険が適用されます。]
(2)1週間の所定労働時間が20時間以上であること。引用:厚生労働省-雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147331.html
※ハローワークへの届け出は、労働基準監督署へ労働保険保険関係成立届を提出した後になります。
まとめ
誰でも会社が作れる時代になりましたが、このように届け出る書類や提出先は煩雑になっています。
書類ごとに優先順位も異なります。
事前に何の書類がいつまでに必要なのか。あらかじめ全体像を把握することが、スムーズに会社設立手続きが進められる秘訣です。