
2019年、プレサービスも開始され、いよいよ商用化に迫った5G。
これまで1G〜4Gと進化を遂げ、どれも私たちの生活を大きく変えてきた無線通信システムですが、今後5Gに移行していくことでどのようなサービスが始まり、私たちの生活にどのように影響を与えると予測されているのかを、5Gの特性と言われている「高速大容量通信」、「超高信頼低遅延」、「多数同時接続」の3つのポイントと考えられる技術と合わせ、この記事で紹介していきたいと思います。
1.5Gとは?
5Gとは「5th Generation(第5世代移動通信システム)」の略称であり 4Gに続く無線通信システムで、2020年の春から商用化がはじまります。
この5Gには「高速大容量通信」、「超高信頼低遅延」、「多数同時接続」といった特性があります。
この3つの特性は、IoTやAI、自動運転といったさまざまな次世代技術との組み合わせにより私たちの生活、産業、社会の変化を加速させると言われています。
1980年代、自動車電話やショルダーフォンなどに採用されたアナログ方式の1Gから始まり、1990年代には2Gに移行、アナログ通信からデジタル通信になりました。
2000年代に入ると3Gへの移行により通信速度が格段に上がり、携帯電話の普及率は上昇しました。
3G時代の終盤2007年にはアメリカで初代iPhoneが発売されます。
2010年代になると携帯電話の普及によって圧迫された周波数帯域を解消するために徐々に4Gへの移行が進みました。
5Gにより変化が加速すると考えられてる産業とその概要
- 医療・介護:健康管理と病気・介護予防、自立支援システムや遠隔医療の普及
- 物流:小型無人機(ドローン)や自動運転の配送車などによる自動物流システムの普及
- 金融:消費データなどの金融関連データの活用
- エネルギー:スマートシティーなどによる生産と消費の管理と最適化システム
- 住宅流通:次世代住宅(スマートホーム)の普及
- スポーツ:文化芸術:仮想現実(VR)や拡張現実(AR)による次世代コンテンツ
- 農林水産:自動化と生産管理システム
加えてこの5GとIoTやAI、自動運転といった次世代技術との組み合わせによる変化がSociety 5.0(ソサエティー5.0)を可能にすると言われています。
このSociety5.0(ソサエティー5.0)とは、政府、企業/団体が提唱する未来社会のコンセプトであり、私たちが迎える、それほど遠くない未来の予想図とも言われています。
5Gがインターネット通信の重要なインフラの一つとしてより多くの「もの、こと、サービス」と「統合データ基盤」とをつなぐことで、様々な変化が予測されています。
このような変化をもたらす重要な要素と考えられている5Gの特性、高速大容量通信、超信頼低遅延、多数同時接続についてご紹介いたします。
2.高速大容量通信(eMBB)
5Gに関してよく例とされているのが「2時間の動画を3秒でダウンロード」だと思います。
これを可能にするのが「高速大容量通信(eMBB)」の技術となります。
5Gではこの高速大容量通信を可能にするために使用する周波数帯の拡大が行われました。
現在4Gで採用されている周波数帯は、3.6GHz帯以下となっていますが、5Gになると3.7GHz帯、4.5GHz帯のsub6(6GHz未満の周波数)と28GHz帯の高周波数帯(ミリ波)が採用されます。
5Gと4G向け周波数帯域

5Gと4Gの周波数帯の比較
4G:700MHz帯 900MHz帯 1.5GHz帯 1.7GHz帯 2.1GHz帯 2.5GHz帯 3.5GHz帯
5G:3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯
高周波数帯の特性として「直進的に飛び、遠くまで飛びずらくなる」というものがあります。
さらに5Gで採用される28GHz帯となると、ミリ波(正確にはマイクロ波)と呼ばれ、非常に波長が短く、障害物や雨などの天候の変化に弱い性質を持ちます。
しかし5Gではこの高波数帯の「直進に飛ぶ」性質を活かし、ビームフォーミングという技術を利用しています。

ビームフォーミングとは従来のような1つの電波をみんなで分け合う通信ではなく、ひとりひとりに専用の電波を割り当てる文字通りビームのような通信方式のことです。
特定の方向に電波を集中的に送信することにより高品質な信号をより確実に届けることが可能となり、他の送受信機との干渉をさけられるメリットがあります。
3.超高信頼低遅延
5Gに関してよく取り上げられるのが「自動運転」だと思います。
これを実現するために必要になるのが「超高信頼低遅延(mMTC)」の技術となり、リアルタイム通信とも呼ばれています。
超信頼低遅延を可能にするために使われているのが「マルチアクセス エッジ コンピューティング(MEC)」となります。
マルチアクセス エッジ コンピューティングとは、物理的にユーザーからより近い場所でデータ処理を行うことで遅延を減らし、大容量の通信処理をリアルタイムで実行する技術の事です。
端末からクラウドサーバーなどにアクセスするまでの過程を減らし、端末から端末へと直接、通信することができます。
自動運転を例にあげますと従来の通信では、ブレーキ信号を発信して実際に車が停止するまで 0.01秒かかっていたところをマルチアクセス エッジコンピューティングでは、0.001秒まで短縮することができます。
体感的に誤差を感じにくいと思いますが、車が停止するまでの実際の距離に換算すると数十㎝の差となります。
4.多数同時接続
これまで紹介した「高速大容量通信(mMBB)」と「超高信頼低遅延(mMTC)」を可能にする支えとなる技術が「多数同時接続(URLLC)」となります。

5Gの多数同時接続の技術に関してよく取り上げられるのが、「同時接続が可能な端末台数は4Gの100倍」だと思います。
こちらはあくまでも通信会社が目標値とされている数値ではありますが、1平方㎞に換算すると最大100万台の端末が接続可能となり、1基地局単位に換算すると4Gが100端末なのに対して、5Gが1万~2万端末の同時接続が可能となります。
この多数同時接続を可能にする技術が「ネットワークスライシング」となります。
ネットワークスライシングとは、高速大容量通信、低遅延高信頼といったように内容の異なる通信を適切なネットワークに仮想的に分割し提供する技術のことです。
この多数同時接続の技術を踏まえてもう一度2つの高速大容量と超高信頼低遅延の技術を見ると、この3つの特性があってはじめて、5Gと呼べるということを実感できるのではないでしょうか。
5.5Gとインターネット
5Gの超高速大容量、高信頼低遅延、同時多数接続の性質とIoTやAI技術によって行動データや画像・音声認識データは、統合データ基盤に集約されます。
これらの集約されたデジタルデータは、インターネットサービスだけではなく店舗運営といった現実の空間における品質向上への活用が期待されており、デジタルとフィジカルとの融合とも言われています。
デジタルデータの活用による店舗とインターネットサービス運営
- 5GとIoTやAI技術による行動データ、音声・画像認証データの収集
- 高度化・大容量化したデジタルデータを統合データ基盤で管理
- デジタルデータ活用による店舗とインターネットサービス運営における品質改善
5GとIoTやAI技術によって収集された行動データ、音声・画像認証データが、インターネットサービスだけではなく実店舗の運営にも活用されることが予測されています。
6.まとめ と 5Gのいつ
今回具体的に、5Gがいつから、こういった変化をもたらすのか?を共有できるまでには至りませんでした。
原因としては、超高速大容量、高信頼低遅延、多数同時接続のひとつひとつを体感できるようになるためには、端末、基地局、エッジコンンピューティング、ネットワークスライシングといったさまざまな5Gの要素が揃う必要があることに加え、IoTやAI技術との連携のタイミングも影響するためです。
今回の記事のまとめを利用させていただき、こういった5Gのいつ?をイメージするためのさまざまな要素の進捗を少しでも読み取れる記事や資料を共有させていただきます。
5Gのいつ?をイメージする際の参考にしていただければ幸いです。
2020年1月22日
5Gの高度化と6G ホワイトペーパー 2020年1月|株式会社NTTドコモ
2019年12月18日
2020年以降、約5年で世界の11億回線の約3割 業界団体GSMAの予測|総務省
2019年11月27日
2025年 56% 5G対応携帯端末 46% 5G契約回線|野村総合研究所
2019年9月30日
国内最多となる5万局超を2023年度末までに構築|KDDI株式会社
2019年4月10日
2024年度末までの基盤展開率 64.0%(全国)計画値 ソフトバンク|日本経済新聞