
薬機法(旧:薬事法)とは、医薬品・医療機器・化粧品・医薬部外品・健康食品の品質や有効性・安全性を守り、製造・広告などについて細かく定められている、ライターが知るべき法律のひとつです。
薬機法に該当する商品のなかでも、種類が幅広く、ライティングの機会も多い 「化粧品」に焦点を当て、薬機法上での化粧品のルール・該当する商品についてご紹介します。
また、「取り扱う化粧品の良さを消費者にアピールしたい!」「記事作成の前に薬機法に抵触しない表現が知りたい!」と悩めるライターへ、薬機法に抵触せず商品をアピールする表現・コツ・関連ルールもご紹介しますので、ライティングの参考になさってください。
【薬機法】化粧品のルール・該当する商品

化粧品のルール
薬機法で 「化粧品」は以下のように定められています。
第二条3
この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。
ただし、これらの使用目的のほかに、第一項第二号又は第三号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。
引用元: e-Gov法令検索:昭和三十五年法律第百四十五号 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
シンプルに「人が身体を清潔に保つため・見た目を整えるために使用するものは薬機法に該当する」と考えると、薬機法での「化粧品」の全体像がイメージしやすいと思います。
化粧品と薬用化粧品
ここで、「具体的にどの製品が薬機法に当てはまるの?」と迷ってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
薬機法に該当する化粧品は幅広いため、ここでは 薬機法に該当する化粧品の一部を以下の表にまとめてみました。
メイクアップ製品 | 口紅・ファンデーション・マスカラなど |
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スキンケア製品 | 化粧水・乳液・美容液など |
ヘアケア用品 | シャンプー・リンス・ヘアオイルなど |
香水製品 | 香水・コロンなど |
その他 | 浴用化粧品・爪化粧品・ボディーパウダーなど |
「化粧品」というと、主にメイクアップ製品を思い浮かべるかもしれませんが、シャンプー・リンス・石けんなども薬機法では化粧品に該当します。
注意点としては 「薬用化粧品」であるという点です。
薬用化粧品は、化粧品に有効成分が含まれるため、化粧品と医薬品の間の「医薬部外品」に該当します。薬機法では「化粧品」と「医薬部外品」のルールは異なります。
化粧品に関係する記事作成・広告の場合、 「これから記事作成する商品・サービスは薬機法に該当するのか」また 「化粧品なのか薬用化粧品なのか」を記事作成前に確認することで、ライティングをスムーズに進めることができます。
「薬機法をもう少し詳しく知りたい!」という方は、ぜひこちらの記事もチェックしてください。

薬機法をご存知ですか?記事を書く前に見る薬機法の基礎知識
商品をアピールしたい気持ちが先行してしまい、薬機法(旧薬事法)に抵触してしまうことがないよう、法的リスクを十分に理解して記事作成を進めていきましょう。
化粧品の効果効能の表現

実は、薬機法上、化粧品の効能効果の表現は厚生労働省によって定められています。虚偽・誇大広告とみなされ薬機法に抵触すると、ペナルティを受けます。
ペナルティの対象行為・課徴金額・課徴金対象期間などの詳細は、厚生労働省「課徴金制度の導入について」をご覧ください。
化粧品の効能の範囲
「化粧品の効能効果の範囲」の内容は以下の7つです。
1~16:頭皮・毛髪について
17~37:肌・皮膚について
38:香りついて
39~41:爪について
42~48:唇について
49~55:口腔内について
56:肌・皮膚について
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上記に加えて、 4つの注意事項があります。
- (注1) 例えば、「補い保つ」は「補う」あるいは「保つ」との効能でも可とする。
- (注2)「皮膚」と「肌」の使い分けは可とする。
- (注3)( )内は、効能には含めないが、使用形態から考慮して、限定するもので ある。
- (注4)(56)については、日本香粧品学会の「化粧品機能評価ガイドライン」に 基づく試験等を行い、その効果を確認した場合に限る。
また、上記で紹介した 56の表現以外の効能効果について、以下のルールがあります。
(3)化粧品に定められた効能効果以外の効能効果について
前記(2)の表に掲げる効能効果以外に「化粧くずれを防ぐ」、「小じわ を目立たなく見せる」、「みずみずしい肌に見せる」等のメーキャップ効果 及び「清涼感を与える」、「爽快にする」等の使用感を表示して広告することは、事実に反しない限り認められる。
なお、基礎化粧品等においても、メーキャップ効果及び使用感について 事実であれば表現できる。
上記のように、化粧品の効能効果の表現には ルールが存在します。
しかし、上記にある表現であったとしても、特定機関の試験などで効果が確認されない商品には使用できない場合もあります。
(56)乾燥による小ジワを目立たなくする
対象表現(56)乾燥による小ジワを目立たなくする、を標ぼうする際の条件
機関 | 日本香粧品学会 |
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ガイドライン | 化粧品機能評価法ガイドライン |
どんな商品 | 「新規効能取得のための抗シワ製品評価ガイドライン」に基づく試験 又はそれと同等以上の適切な試験で効果が確認された商品 |
対象表現(56)乾燥による小ジワを目立たなくするは、平成23年に「化粧品の効能の範囲の改正について」により 追加された表現です。
薬機法改正で追加される場合もあるため、情報収集は定期的に行いましょう。
薬機法ライティングのコツ

薬機法のライティングにコツが必要な理由は、商品やサービスの 広告に関して 薬機法第六十六条で以下のことが禁止されているためです。
(誇大広告等)
第六十六条
1 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
禁止されていること
また、薬機法に基づき広告の虚偽・誇大を禁止する 「医薬品等適正広告基準」では、医薬品などの 製造方法・ 効能効果・ 安全性について以下のことを禁止しています。
1:事実より優れている・有利だと表現しない
- 成分や原材料
- 製造方法
- 他社製品の誹謗や比較は行わない
2:効能効果・安全性に関する表現
- 保証する表現は使わない
- 最大級表現を使わない
- 体験談は掲載しない
表現のコツ
上記を踏まえ、薬機法に関連する ライティングのコツは以下の通りです。
言い切り表現をしない
効能効果・安全性の表現は言い切らず、ぼかした表現にしましょう。
言い切りや断定は、効能効果を保証すると捉えられ、薬機法に抵触する可能性があります。
使用方法・使用感・香りのイメージを表現する
「効能効果」や「安全性」に関する個人の感想や体験談は、誤解を与えるおそれがあるため原則認められていません。
ただし、
- 使用方法
- 使用感
- 香りのイメージ
などに関しては、過度な表現や保証的表現でなく、かつ事実に基づく感想や体験談であれば認められています。
(例)「シミ」に関する表現
NG表現
「シワの予防だけでなく出来たシワを薄くする。」
→ 化粧品に対して認められている効能効果を過度に表現しているためNG。
OK表現
「(ファンデーションの色味によって視覚的に)シミを見えにくくする」
→ 効能効果を保証する表現ではないためOK。
薬機法の表現の本質は 「効果効能・安全性の言い切りをしない」ということです。
薬機法に該当する商品・サービスの表現には、消費者が商品・サービスを選ぶ際に、効果効能・安全性に関して間違った判断をしないためにも、細心の注意を払いましょう。
薬機法などの法律は、 不定期に改正されることがあります。
例えば、 2021年8月の改正では、それまで個人・法人ともに 最高200万円だった課徴金について、虚偽・誇大広告規制違反に該当する期間の対象商品の 売上高4.5%が課徴金として徴収されることになります。
つまり、嘘や大げさに広告するとペナルティを受ける可能性があるということです。適切な表現をするためにも、最新の情報を定期的にチェックしましょう。
ライターが知っておくべき薬機法に関連するその他のルール

薬機法に抵触せず広告(ライティングを含む)を行うためには、薬機法に関する知識に加えて、その他関連する法律の理解も必要です。
景品表示法
消費者がより良い商品・サービスを選べるよう、 品質・内容・価格を偽り、または事実よりも 過大な表現を禁止しています。
医療品等適正広告基準
医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器及び再生医療等製品を対象とした広告のルールが示されており、 虚偽・誇大広告を禁止しています。
その他、化粧品であれば 「化粧品の表示に関する公正競争規約施行規則」や 「化粧品等の適正広告ガイドライン」などのルールがありますので、薬機法と併せて確認することで、消費者に正確な情報が届く商品・サービスを安心してアピールできます。
薬機法の基礎知識とテクニックを持つライターになろう!

薬機法に難しいイメージを抱くライターも多いかと思いますが、項目を一つずつ確認すること・本質を知ることができれば、過剰に身構える必要はありません。
今回は、薬機法のなかでも、生活に欠かせない化粧品に焦点を当て、薬機法に 該当する化粧品・ 使用可能な効能効果の表現・ ライティングのコツをご紹介しました。
薬機法を知る目的は、ライターとして適切に商品の良さを表現することであり、消費者が商品・サービスを安心して選べる環境を提供することです。
薬機法の基礎を身につけて、多くの人に喜ばれる記事を作成しましょう!